いまから二十数年後、私たちが生きているこの10年—2020年から2030年—は、おそらく「AI過熱期」として記憶されるでしょう。大げさではなく、大規模言語モデルと連携してほんの少しでも恩恵がありそうなハードでもソフトでも、すべてが「AI◯◯」と銘打たれているように感じます。笑えるもの、気まずいもの、そして露骨にミスリードな例までいくつか集めました。続報をお待ちください、特集を準備中です。
ブラウザー—オンラインに接続する人なら地球上の誰もが使う普及ソフト—も、このAIブームの例外ではありません。2025年初頭からは「AI駆動」をうたうブラウザーがいくつも登場し、Google ChromeやMicrosoft Edgeといった定番も、この流れに乗る機能拡張を受け取りました。
本稿では、まともなAI搭載ブラウザーが備える機能をまとめます。既定のブラウザーとして乗り換えるべきかまだ迷っている方、あるいは現代のブラウザーが提供する機能を手短に把握したい方は読み進めてください。
AIベースのブラウザーに共通する機能
製品ページでどんな用語が使われていようと、AI駆動のブラウザーには概ね次の機能が共通して搭載されています(2025年10月下旬時点)。
- 翻訳。 AIを支える膨大なコードとデータの技術的呼称は「大規模言語モデル(LLM)」です。ゆえに、多言語に対応し翻訳できるのは当然と言えます。
- ライティング支援。 再び技術用語の言語という側面に由来し、表現・文法・構文の改善や、厄介なライターズブロックの克服まで手助けしてくれます。
- 要約。 TL;DR(長すぎて読めない)は、いまやAI駆動ブラウザーの中核機能のひとつです。長文を短くまとめてくれますが、LLMによってはほかより「幻覚」を起こしやすいものもある点は忘れないでください。
- 文脈認識。 AIベースのブラウザーで呼び出すアシスタントは、開いているタブやアクティブなタブ、少なくとも現在表示中のタブの内容を把握しているはずです。操作や提案にはその文脈が反映されます。
- タブ整理。 実装のきめ細かさや俊敏さには差がありますが、概ねは属性(仕事・学習・余暇など)ごとのグルーピング、色分け、しばらく使っていないタブのオフロードや思い切ったクローズに集約されます。
- プロンプト駆動の定型作業自動化。 主要なAIベースのブラウザーはすべて、プロンプトの保存と再利用をサポートします。これにより、以前は数十分、場合によっては数時間かかって「のろのろ」こなしていた日々の雑務を、一気に「走らせる」ことができます。プロンプトはかなり高度にもできます。例えば、特定企業の今朝のニュースを集め、1年前の報道と比較させる。あるいは画像の色味を一連の操作で調整させる。ネットショップを横断して製品を探し、価格比較表を作らせる。などなど…
経路計画から価格比較まで、プロンプト次第でAIブラウザーができることは他にも多数あります。中にはエージェント的な機能をうたうものもあり、航空券の手配やピザの注文まで代行できると言います。こうした操作には複数のアカウントとの深い連携が必要で、OpenAIのAtlasの最近の件が示すように、現時点では必ずしも安全とは言えません。とはいえ、ソフトウェアがその方向へ進化していくのは明らかです。ブラウザーが単なるインターネットの入口以上の存在になる未来に、少なくとも心の準備だけはしておくのが賢明でしょう。